真夏の大冒険 地獄の黙示録
神島港から歩きはじて、数分で最初の目的地である時計台に着く。昔は島に時計が一つしかなく島民全員が時刻をこの時計台で確認していたというからすごい時代である。
元々は、富山の薬売りが定期的にこの島を訪れて薬を販売させてもらったお礼に、その薬売りがこの島に時計を寄贈した。という事らしいが、現存するものは当時のものでないらしい。
その時計台からすぐの所に小説でも描写されていた洗濯場がある。現在は答志島から水道が引かれた事により島内の水環境も整備され誰もこの洗濯場を利用する事は無くなったが、使われなくなったタイヤが放置されていた。
この現状を先生が知ったら、あの市ヶ谷駐屯地での割腹自殺は無かった事にして、この放置されたタイヤの前で洗濯場の現状を嘆きながら腹を切ると言いかねないのではないだろうか。
三島由紀夫は潮騒を書き上げるために、この洗濯場脇の階段を上がった左手の住居に居候して執筆していたという事であるが、とにかくこの島の住宅は迷路のようである。
都市部で見られる家と家の境界線である垣根などというものは見かける事はなく、とりあえず上へ上へと向かうが自分がどこにいるのかわからなくなる。
そんな時、家の前で何をするという訳ではなく、座っていたお婆さんから八代神社への道を教えてもらう。かれこれ200段は登っただろうか。太ももには乳酸が溜まり膝がガクガクしてくる。
そこからもう100段ほど登っただろうか。ようやく見えてくるのが八代神社。初江が新治の漁からの無事を祈るシーンなどで、幾度も描かれている場所である。
とにかく伝えたい事は気温40度近い日には、この島の観光は向かない。あまり深く考えずに来てみたが、さっき買ったばかりのお茶はもう半分は飲んでしまった。
あまり調べずに来てしまったが、熱中症になるのではないかと心配になってきた。一度、引き返して、お茶をもう数本購入して再チャレンジしようかどうか迷ったが、一度、引き返したらこの階段をもう一度登る気力はないだろう。という事で前進した。
そんな時、小説に出てくる灯台の事を思い出した。小説の中では、灯台には灯台長が住んでいる事になっていたので、ここまで来れば水を補充出来る。と思ったがそれは小説の世界の話であった。誰だよ知識は身を助ける。と言った奴。誤った判断をしたではないか。
かれこれ400段か500段、それ以上の階段を登ったのではないだろうか。あの老婆と出会ってから誰とも会うことはなく熱中症になったら終わったな。と頭をよぎる。
数年前にリゾーピア熱海に宿泊した際に行ったししどの窟の事を思い出す。思い返すと、エクシブ蓼科では極寒の中遊歩道を歩いてみたり、エクシブ鳴門では、猛暑の中アロマハウスまで歩いてみたりと、皆さんの期待に応えるのも大変なのです。
淡い期待の中、監的哨跡までなんとか歩くが水なんてあるわけもなくもう死んだ😆
年を取ると、筋肉痛が翌日ではく、翌々日とかに来るが、今日は歩き始めて当日の1時間後に筋肉痛になった。若返ったのだろうか。とかその時はそんなことを考える余裕もなく。
とりあえず、タバコを吹かす。多少生き返れると思ったがそんなわけない。初島はなんて素晴らしい島なのだろうか。自販機はすぐにあるし、ソフトクリームだって売っている。熱中症になったところで誰かが発見してくれる。という素晴らしい島である。
三島由紀夫の潮騒の事をすっかり忘れていたが、この監的哨跡は、密会の場所として描かれている。いやーいくら百恵ちゃんから村の真裏であるあの監的哨で会いましょ。と誘われても俺が三浦友和でも行かない。遠すぎ。いや遠いというか高低差ありすぎ。
昔、エベレスト登山のドキュメンタリーを見ていた時、なんで一日に40メートルしか進まないのか意味がわからなかったが、この小さい島に来て痛感。とにかく登山は距離ではなく高低差である。
フラフラになりながら山を越えると見えてきたのは素晴らしい景色。そんな景色を眺めていると第一村人発見。ワカメ漁をしているおばちゃんであった。どうやら正確に表現すると発見されたのは自分のようで、この暑い中、山超えてきたんけーとかそんな事を言われたが、島民でもこの猛暑の中は山を超えないらしい。
ここでしばらく涼んでおれー。ちょっとしたら息子が軽トラで迎えに来るから一緒に港まで帰れーと言われた。マジで助かった。と思った。港まで軽トラの荷台に座りながら風を感じるとこの島唯一の飲食店でかき氷を食べた。この飲食店では帰りの定期船の時刻まで現代人の最高の発明であるエアコンという物を味わさせていただいたがノーベル賞レベルの発明ではないだろうか。
そんな20世紀最高の発明を味わっていると、死にそうな顔した老夫婦が入ってきた。おそらく1時間前は僕も同じ顔をしていたのだろう。どうやら、今日、この島に観光として訪れたのは、僕を含めてこの老夫婦と3人だけのようである。おそらくこの老夫婦も三島由紀夫の潮騒に惹かれこの島を訪れたのであろうが、最後は潮騒なんてどっかにすっ飛んでいただろう。
当初は三島由紀夫の小説潮騒に惹かれてこの島に来てみたが、帰りの船に乗る頃にはそんな事は忘れ、この島で出会った人の優しさ、清々しさに魅了された。
今日はこれから鳥羽港まで戻りとりあえず明日の仕事のために名古屋まで向かう。名古屋での宿はまだ予約していない。
あーもしもし、サンメンバーズ白川ですか?トラスティ白川。どっちでも良いんですが。今日満室ーなんでーやねん。
相変わらずなのです。
何かとお世話になったトラスティ名古屋白川ですが、2026年5月31日の宿泊を最後に閉館が決まりました。まだ行かれた事がない方は一度、行かれてみてはいかがでしょうか。
本日のブログにてクラベール真夏の大冒険は全18話は最終回となります。
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